江戸時代を題材にしたテレビの時代劇では、江戸の街中で釣りをするシーンがたまに出てきますね。暇な旗本や貧乏浪人が川に釣り糸をたらしている情景を見ると、筆者などはつい当時の釣り道具はどんなものだったんだろうかと思ってしまいます。静かに流れる川の場合はまだ何となく想像はつくのですが、波が荒い海の場合なんかはその疑問がずっと大きくなります。浜ちゃん、スーさんの掛け合いで有名な映画『釣りバカ日誌』では江戸時代の日本海(山形県酒田市)で釣りをするシーンが出てきますが、それを見た時は、映画の内容そっちのけで釣り道具に興味がいってしまったぐらいです。
現代では、釣り竿といえばカーボン製、糸はナイロンやポリエチレン製などが主流で、糸を巻く金属製のリールがあり、浮きや重りや針にもいろいろあります。ですが、幸村の時代はどうだったのでしょうか?
竿に付けるリールは無かったと思うので、竿はいわゆる延べ竿(リールが無いもの)ですね。素材は竹。これは今でも使われている竿です(高いものだと一本何十万円もしますね)。重りは鉛か鉄でしょうか。昔もありましたから。針はたぶん鉄ですね(はるか昔は動物や魚の骨を削って作ったらしいですが)。浮きはとにかく水に浮くもので、竹でも何でもいいですね。何となく想像できます。
問題は糸です。
馬の尻尾の毛をつなぎ合わせて釣り糸にしたという話をよく聞きますが、尻尾の毛は丈夫なんですね。筆者は直に触れたことがないのでわかりませんが、撥水性に富むのはもちろん、引張り強度もかなりなもののようです。ですが、確か日蓮宗の祖・日蓮上人の伝記に書いてあったのですが、日蓮のお父さんが安房(今の千葉県)で漁師をしていて、家に帰ってきた息子のために鯛を釣ってきたという話があります(残念ながら息子は僧侶になったために魚は食べられなかったのですが)。これは鎌倉時代の元寇(中国の元が日本に攻めてきた事件)よりも少し前で、幸村の時代よりも350年ぐらい前の話です。その頃に鯛のように大きくて水深数十メートルにいる魚を波の荒い海で釣っていたのかと思うと、その時に使った糸も馬の尻尾の毛?と思わず思ってしまいます。毛を撚って、いわゆる撚糸(よりいと)にして強度を上げていたんでしょうか?絹や木綿は当時は簡単には入手できなかったので、麻で糸を作ったということも考えられますね。ただ、その場合はかなり太い糸になってしまうから、釣りには不向きに思えます。
真田紐はどうでしょうか?真田氏は、当時は高級品だった木綿を使って大変丈夫な真田紐を製造・販売していたわけですが、これを使えば、数百kgの本マグロでも釣れたかもしれませんね。もしそうだとしたら、真田氏がその気になっていれば、シマノとかダイワといった現代でいう釣り具メーカーとして大成功したかもしれません。もっとも当時、釣り人口がどれほどだったかはわかりませんが。
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